3.調査活動(2)


3.2 国外の場合

 国外地震の場合は、耐震連絡小委員会が中心となって、学会としての調査団を結成し被災地に派遣する。調査団はWGを兼ね、帰国後はその構成を適宜改め、調査結果の公表を行う。また、調査団派遣中の日本における対外的な窓口の役割は耐震連絡小委員会主査が行う。
 調査に必要な物品・機材(表3.2参照)は可能な限り現地で調達することになろう。なお、付録5に調査団の被災国への携行品の一例を示す。I
調査団の基本的な活動方針を以下に示す。

(1)調査手順
 国外の場合は、被災国の耐震基準や一般的な構造物の種別など、事前にできる限りの情報を収集しておくことが望ましい。また、国外の場合には多数の死傷者が出る場合が多いので、被災者の救出や都市機能の回復状況、治安状態を把握しておくことも必要である。一般的には、先ず現地の行政機関や研究機関、日本大使館、日本企業などから必要な情報の収集を行うとともに、その協力を得て実際に被災地を視察・調査する。このようにして被害の概要と特徴を把握した後に、より詳細な調査(建築物の場合は全数調査、個別調査など)を計画し、実施する。調査項目の例を表3.1に示す。また、付録6に、建築物の被害調査で用いる調査票の例を示す。被災状況に応じて調査項目を適宜修正したものを予め準備することによって、調査の迅速化や調査員による調査結果のばらつきの縮小を図ることができる。
(2)現地機関との連携
 国外の場合は現地機関の協力が不可欠である。出発前から調査の協力依頼をして、受入れ機関(または技術者)を事前に確保しておくことが望ましい。
 他方、開発途上国の場合には、調査結果の地元への還元や、日本の知識・技術を現地の関係者に紹介して役立てるなどの、学術・技術面での現地に対する協力が必要である。具体的には、現地との共同調査や調査費用の負担、情報交換会・講習会・報告会の開催、復興に向けての技術的アドバイス等が考えられる。また、便宜を受ける現地の関係機関や技術者に対し、表敬訪問をはじめ、感謝の意を示す品物を持参するなどの配慮が望まれる。
 なお、帰国後には早急に、情報提供や便宜を受けた現地機関に対し、協力に対する礼状(付録4参照)や調査報告書等を送るのが礼儀である。
(3)調査活動における留意事項
 一般に、国外調査団は人数・滞在日数に制約があるため、役割分担をして組織的・効率的に調査活動を行うことが必要となる。従って、団員には調査団への協力と統制の取れた行動が要求され、必ずしも各自の希望する調査活動だけを行えるとは限らないことを各団員は念頭においておかねばならない。
 建築学会が調査団を派遣するほどの地震災害の場合は、現地の混乱が長期に渡り、被災者が住居にも不自由している状況もしばしば見られる。このようなところで調査活動を行う場合は、被災者を初めとする現地の関係者との対応には十分な配慮が望まれる。
 また、団員の安全に対しても十分に配慮しなければならない。被災建物を目の当たりにすると学術的興味から危険に近寄りがちとなる。被災建物内へ入る場合などは、余震の危険や日本との構造形式の違いなどを考慮した、一層慎重な判断が望まれる。さらに、現地の復旧状況や冶安の状態などを考慮して、日常生活面からも団員の安全に配慮することが必要である。


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