1999年コロンビア中西部のキンデイオ地震の現地調査

(文部省科学研究費・突発災害調査)

1999年4月9日

 

 

1 はじめに

 1999年1月25日現地時間午後1時20分ごろコロンビア中西部に発生した地震はキンデイオ県の県都アルメニアを始め周辺の町で多くの建物倒壊を生じ千名を越える死者をもたらした。現地では被災地の県名からキンデイオ(Quindio)地震と呼んでいる。突発災害調査として文部省科学研究費が認められた。研究組織を以下に示す。

研究代表者:鏡味洋史(北海道大・工)

地震学的調査:梅田康弘(京都大・防災研)佐藤比呂志(東京大・地震研)

構造物被害調査:谷口仁士(理化学研・三木)

建築物被害調査:石山祐二(北海道大・工)吉村浩二(大分大・工)

地震予知情報調査:西上欽也(京都大・防災研)

災害対応調査:林春男(京都大・防災研)

の8名である。

 

2 調査の概要

 

 調査は現地のカウンターパートであるINGEOMINAS(コロンビア地質・鉱山調査所)との調整ののち地震発生から1ヶ月余り経過した3月3日から15日までの約2週間実施した。そのうち被災地の現地調査は6日から行った。その前後は首都のサンタフェデボゴタでの情報・資料の収集、意見の交換・討議にあてた。現地調査には研究協力者として京都大学の大学院生の川方弘則、Nelson PulidoZennon Aguilarが同行した。また、土木学会の調査団(橋本隆雄、宮島昌克)とも行動を共にした。

 

3 地震学・地質学的特徴

 地震の規模はM=6.2、震源深さは10km程度と浅い。臨時観測網による余震域はおおむね長さ10km、幅5kmである。地表に地震断層は現れていない。道路を横切る水平食い違いが見られたが地盤変状による可能性もあり即断できない。飛び石は見つけられなかった。

 

4 被害分布・強震記録

 被災域は南北約80km東西40kmに広がっており、断層の走行を反映した南北に長い分布となっている。特に被害の大きかったのはアルメニアの他、東隣のカラルカ、震源に近いバロセロナ、平野部のテバイダで全壊率50%前後となっている。強震記録はアルメニア市内のキンデイオ大学構内とアルメニア北方15kmのフィランデイアで500galを越える記録が得られている。ペレイラ市内では岩盤上を含む5点で記録が得られており、地盤の増幅効果が著しい。被害分布の解析からは広域的には地震発生メカニズムとの関係、強震動分布との関係などが、小領域でのミクロな分布からは地盤条件や地形条件との関係の議論が期待される。

 

5 構造物被害

 建築物の構造種別はレンガ造が主体でありRCの柱・梁による補強が多くなされていた。また、現地で多産される竹材を多用している。竹は内・外壁のほか床組、小屋組に広く用いられており、応急の支柱や仮設住宅にも利用されている。被害を受けたものの多くは柱・梁の接合部の処理、構造計画上のアンバランス、施工の問題などが多く指摘される。耐震規定は1984年に制定されておりそれ以前のいわゆる既存不適格の建物に被害が多い。被害分布は沢を埋めた地域が被害が著しいなど地盤条件との関連が強い。

 

6 災害対応

 日本に伝わった報道では地震直後の略奪など混乱のみが強調された感が強い。現地の対応は国・県・市・民間組織などの各セクターで精力的に進められている。入手した資料から災害の全体像を探っていく。アルメニア市では市の中心部を活断層が横切っておりこれを避けた都市計画が提案され議論されていた。くしくも地震発生の前日徹夜の市議会で計画案が可決された。地震の発生以降、復興計画が熱心に議論されている。

 

 (文責:鏡味洋史)

 

北海道大学大学院工学研究科都市環境工学専攻

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