イラン・バム地震に関する災害委員会・委員のアンケート調査のまとめ
2004年1月11日
1. 返答者氏名一覧(敬称略)
岡田成幸、北後明彦、中林一樹、源栄正人、小谷俊介、吹田啓一郎、久田嘉章
2. イランの関係機関に関する情報
・ International Institute of Earthquake Engineering and Seismology(イランの国際地震工学地震学研究所)
東北大学災害制御研究センターでは、Dr. M. Ghafory-Ashtiany所長他、Dr.Ghayamghamian; Dr.Benamfahrは研究協力関係にある。2002年のAvaj-Changureh地震で共同調査実績あり。Bam地震に関するIIEESの調査内容はDr.Ghayamghamianから報告予定。(源栄)
Dr. M. Ghafory-Ashtiany
International Institute of Earthquake Engineering and Seismology
P.O. Box 19395/3913, Tehran, I.R. Iran
ashtiany@dena.iisee.ac.ir
・ Building and Housing Research Center (BHRC、イランの住宅都市整備公団あるいは建築研究所に相当)
Prof. Komak Panah他、Prof. N. Hafeziとの交流あり。Prof. N. Hafeziは1/12から1週間、現地入り、調査報告を知らせてもらえる。(源栄)
・ テヘラン大学
講師Dr. Reza Alaghebandian (東京大学大学院博士課程修了)、建築構造専門、日本語自由。
その他に、土木工学専門分野では日本の大学を卒業した教官が数名。
3. 国内外の各機関の活動(救助隊の派遣、調査団の派遣など)
・ 文部科学省の突発災害調査研究に九州大学の鈴木貞臣先生を代表として申請中
課題名:2003年イラン南東部バム地震の総合調査研究(久田)
建築関係では、東京大学地震研究所壁谷沢寿海教授の研究生(BHRC所属)が参加予定
・ 神戸大学都市安全研究センターから数名調査に行く予定(2004年1月24日〜2月2日)
・ 国際救援のNGOであるCODEイラン南東部地震救援 イラン派遣隊(2004 1/1〜1/8)
緊急援助隊24名12・27−1・8
・ JICAテヘランプロジェクト3名による緊急開発調査(復旧・復興計画)1・10−1・2
・ UNとOHCAと意見交換・医療コーディネータとの打ち合わせ
・ 1・22日に西井氏ら(応用インターナショナル)テヘラン入り
4. 今回の地震調査のため、建築学会から調査団を派遣する必要があるか
・ ある(4)
Ø 耐震工学的に我々が学ぶものはないかと思いますが、技術支援として、再建時の耐震性確保の問題があると思う。
Ø 都市計画的には、85%の建物が壊滅した都市の復興をどのように進めるのか、大きな課題であると思う。
Ø 災害の原因を究明が必要。
・ ない(1)
Ø 死者が多数発生した原因は自明であり、建築構造学的観点での調査で得るものはあまりない。研究という観点ではなく国際貢献という観点から、そのチャンネルを生かして、イランのこれからの建築行政・関連研究者へ助言することは意義がある。建築学会からの調査団派遣という形式ではなく、個人的チャンネルを生かした交流を活発化することのほうが現実的。
5. 建築学会災害委員会が調査団を計画した場合に、この調査団に参加する意向がるか。
・参加できない(5)
Ø 別のプロジェクトで企画予定(1)。企画済み(1)。時間的に無理(2)
・参加したい(3)
Ø 湯浅昇(日本大学生産工学部建築工学科)
Ø 源栄正人(東北大学:時期による)
Ø 久田嘉章(文部科学省の突発災害調査研究に参加予定。学会としても派遣する場合、協同で行うと良い)
6. 今回のイラン地震に学会調査団を派遣した場合、どのような意義があるものと考えるか。
・ 意義は大きくない(1)
Ø 今の時点でできる調査は、地震後の救出活動に関するものだと思いますが、アドベの倒壊下で救出可能なGolden timeは24時間(新聞等では72時間と報道されていますがそれはRC造の場合であり、今回はもっと短いと思われます)で、すでに救出可能な時間を大きく経過しています。よって、新たなデータが上がってくる可能性はかなり低いと思われます。また、死者が数万人に達していますので、死体検案も不十分であり、災害医学からのデータ発掘もかなり難しいのではないかと思われます。よって、ここまでに至るイラン側の調査体制に依存せざるを得なく、従前からいわれているアドベの非耐震性が確認されるのみで、この時点での調査的意義は見いだし難い印象を強く持っている。
・ 意義はある(4)
Ø 震源域地震動と被害の関係調査に基づくデータの収集とその地震被害推定への反映(3)
Ø 技術支援、復旧・復興支援、技術移転など、国際社会貢献の視点(3)
Ø 地震災害の状況と原因を究明する。特に、建築物の崩壊理由は研究対象にならないとしても、このような災害が繰り返し発生する社会的な要因を研究するには重要である。
Ø 諸側面からの調査団を結成できれば、総合的な視野からの教訓を得ることができると考えられる。
Ø 建物復興に当たっての耐震性、都市復興の課題、世界遺産の課題、さらに復興に必要な経済資金の問題も出てくる。純粋な学術調査ではすまない。
7.その他
・ 数万人の犠牲者をもたらした地震災害ですので、建築学会としてもカウンターパート(例えば、IIEES)との共同で当該地震の災害調査報告を作成しておきたい。
・ これを機会にイランの地震工学研究者との連携が深まれば良い。
・ 日本の耐震技術が国際的に優位な立場にあるにも拘らず、世界的に地震災害に対する貢献が少ない。耐震構造として高いレベルにある日本にとって、遅れた建築構法に対して学ぶ必要がないというのは一理ある。しかし、災害は最先端の耐震技術があるから防げるものではなく、その普及があって初めて災害の軽減に役立つものである。日本においても、耐震技術が十分に普及しているとは考えられなく、今後の地震災害の最大関心事である。この点で、今回の地震災害調査により、災害と言うものがどのようようにして生じるのか、その原因を捉えることが望まれる。