トリアージ・デモンストレーションとは 一般に、災害救護訓練は、病状や病名を示したパネルをぶら下げたり、外傷のメイキャップを施したりした模擬患者に対して、医師がトリアージを実施し、その判定結果により救護所内で自主防災組織などが応急処置を行うといった形で行われますが、トリアージは、訓練メニューの中に組み込まれているため、一般の方たちは、これらを見学してもトリアージの必要性や意義を必ずしも体感できるとは限りません。 実際、トリアージという言葉は一般市民には殆ど知られておらず、それ故、その意味も意義も理解されていないのが現実です。そして、このような中で、地震などの災害により多数の負傷者が発生した場合、トリアージを実施しようとしても、不幸にして死亡された方に対して平常時と同様に最善の治療を求める家族や我先にと治療を求めて殺到する軽症外傷者などにより、医療救護所や病院は大混乱となる上、結局、本来ならば助かるはずの人達までもが命を落としてしまう、という最悪の事態を招く恐れすらあります。 トリアージ・デモンストレーションは、従来のような参加者に対する訓練ではなく、トリアージの意義を一般住民に理解してもらうことを目的として実施する、いわば「見せるトリアージ」です。従って、見学する方たち以外は、模擬患者・医師・救護所担当者などトリアージ・デモンストレーションに参加する者全てが「役者」であり、トリアージ判定結果は、もちろん、対応までもが予め定められたシナリオに基づく演技によって進行します。 さて、トリアージ・デモンストレーションは、第1部と第2部とに分かれています。 すなわち、第1部では、トリアージを理解してもらうため、7人の模擬患者を1名ずつ送り出し、司会が病状などを説明しつつ、医師がトリアージを実施します。 一方、第2部は、地震などの災害発生を想定したもので、上記の7人の他に、瀕死の重症者と家族、我先にと治療を求める軽症者などを加えて、実際の災害時に予想される混乱を演出して行います。 更に、その後、司会が、それぞれの模擬患者の傷病名や判定結果などについて説明し、見学者にトリアージの必要性や意義への理解を求めるという構成になっています。 トリアージ・デモンストレーションを実施する場合は、模擬患者にメイキャップを施し演技指導を行うだけでなく、医師役の方にはトリアージの判定結果もお知らせして行います。 又、家族役など、他の役者にも演技指導を行いますが、これらの手順やシナリオは、全て予め用意されていますので、当日に困惑することは全くありません。 実際には、地域の防災担当者や自主防災組織、一般住民の方などが役者として参加し、地域の医療機関からは医師や看護師・事務員などの方に役者となって出ていただきます。 そして、住民の方が扮する模擬患者を、地域自主防の方が担架で模擬救護所などに搬送し、地域医療機関の医師がトリアージを実施します。残った防災関係の役員の方や他の医療機関のスタッフは、模擬救護所などに詰めて、模擬患者に対応していただくことになります。 身近な方々が参加して行う「住民参加の体験型訓練」となるため、現実味があり、見学者に与えるインパクトも大きく、地域の住民と医師・看護師・職員などが訓練体験を共有することで、災害時の救護活動に必要な連帯意識や信頼関係が生まれるものと考えます。             実施のためのノウハウについて トリアージ・デモンストレーションで使用するシナリオやメイキャップ法・演技説明などは、PDFファイルにして、本CD−ROM内のフォルダ「PDF・TD」に納めてあります。 ただし、画面表示や印刷の品質は劣ります。又、文書のアレンジもできませんので、ご了承願います。 PDFファイルをご覧になるには、Adobe ReaderTMが必要ですが、Adobe社のホームページ(http://www.adobe.co.jp)より無料でダウンロードできます。 なお、上記のシナリオなどで引用している動画ファイル『トリアージ・デモンストレーション 実施の手引き』や『模擬患者のトリアージ』は、いずれも本CD−ROMには収納されていませんので、御了承願います。 『トリアージ・デモンストレーション 実施の手引き』や『模擬患者のトリアージ』をご覧になるには、別途のCD−ROMやビデオテープ「トリアージの理解と啓発のためのビデオ集」が必要となります。       トリアージ・デモンストレーションのビデオを頒布しています  『災害医療シミュレーション  トリアージ 〜その時あなたは・・・〜』(約29分)は、NHKエンタープライズ21などとも協力して活動している在京の番組制作会社「アサヒカコー(株)」のご厚意により、静岡市医師会の企画で制作されたビデオです。 トリアージ・デモンストレーションを実施した際の映像なので、実際と同一の模擬患者症例のメイクに始まって、第1部・第2部の様子をご覧いただけます。 更に、その後から、静岡赤十字病院 救命救急センター長 安心院 康彦先生が、模擬患者を使って、トリアージ判定についての解説をして下さいますので、これ1本を視聴するだけで、トリアージ・デモンストレーション全体の流れが判るだけでなく、トリアージ自体の理解も可能な構成になっています。 ビデオの購入などは、同社のホームページ「http://www.asahikako.jp」をご覧下さい。