シナリオの使い方について トリアージ・デモンストレーションは、従来のような参加者に対する訓練ではなく、トリアージの意義を一般住民に理解してもらうことを目的とした「見せるトリアージ」です。 ここでは、見学する方たち以外の参加者は、模擬患者だけでなく、医師も救護所担当者も家族役も、皆、「役者」であり、役柄に応じた演技を行います。例えば、医師役には、トリアージの判定結果すら予め知らされています。            準備から実施までをお手伝いします 「トリアージデモンストレーションの手引き・シナリオ」には、実施の際に必要な用品の一覧やチェック・リスト、事前準備、役者の役柄、役者リスト、当日の会場準備など、実施関係者に必要な説明が記載されています。 更に、参加する役者に対する演技指導の分担や手順、説明内容、司会進行のセリフなどが、全て記載されていますので、実施を担当する方も参加者も、当日に困惑することは全くありません。 病院版は、災害時の病院の役割を説明する場合のシナリオで、全体の構成は変わりませんが、災害時の病院の役割を強調した説明になっています。 「模擬患者のメイキャップと演技説明」には、模擬患者のメイキャップや演技指導の要領が写真入りで記載されています。 小道具としてトリアージ・タッグが必要になりますが、入手できない場合には、「トリアージ・タッグ自作用ファイル」によりカラープリンタで作成することができます。 本CD−ROM内のフォルダ「PDF・TD」には、トリアージ・デモンストレーションで使用するシナリオなど、トリアージ・デモンストレーションの実施について説明した文書ファィルをPDFファイルに変換して納めてあります。 ただし、これらのファイルは、画面表示や印刷の品質は劣ります。又、文書のアレンジもできませんので、ご了承願います。 PDFファイルをご覧になるには、Adobe ReaderTMが必要ですが、Adobe社のホームページ(http://www.adobe.co.jp)より無料でダウンロードできます。 以下に、具体的症例の出番の際に、シナリオに記載されている各役者の演技が、どのような場面効果を演出するのかについての説明がありますので、ご覧下さい。        具体的症例の出番における各役者の演技と演出効果 患者番号14 (顔面打撲、鼻出血 緑タッグ)の方は、第1部では、 ┌────────────────────────────────────┐ │顔面が痛くて鼻血が止まりません。自分の顔がくしゃくしゃになったと思い、真│ │っ先に、先生に早く治療をして、とわがままを言い続けて下さい。  │ └────────────────────────────────────┘ という演技を行います。 医師を始めとしたトリアージ担当チームの面々は、「このケガなら応急処置だけで、今すぐ治療を行わなくても問題ありません」などの説明を行いつつ、トリアージを行います。 第2部では、この演技に、更に、同行した騒ぎ役14も加わって、 ┌─────────────────────────────────┐ │「頭を打っているんだから、こっちが先だ、病院へ連れて行って検査もし│ │てくれ、傷跡が残らないのか、痛み止めはないのか、担架を早く」などと│ │救護所の役員や医師などに言いたい放題言って下さい。 │ └─────────────────────────────────┘ という演技を行い、付き添った家族も加わって引き起こされる混乱を演出して下さい。 トリアージ担当チームなどの面々は、「このケガは、治療が後になっても、結果が悪くなるような心配はありません」「放置できない危険な状態の重傷者が他に多数出ているため、こちらの方には、しばらく治療を待ってもらいたいのです」等々により対応して下さい。 患者番号16(急性硬膜下血腫 成人人形 黒タッグ)での家族役16は、 ┌─────────────────────────────────┐ │あなたの家族が意識不明で死にかけています。悲しそうな表情で付き添 │ │い、励ましたり、名前を呼んだりして下さい。 │ └─────────────────────────────────┘ という演技を行い、更に、騒ぎ役16の方は、 ┌─────────────────────────────────┐ │「まだ死んでなんかいない、人工呼吸や心臓マッサージをやってくれ、病│ │院へ連れて行って治療してくれよ、うちの家族なんだ」などと救護所の役│ │員や医師たちに言いたい放題言って下さい。又、「目を開けろよ、しっかり│ │しろ」と人形に向かって叫びかけて下さい。     │ └─────────────────────────────────┘ により、取り乱した家族の演技を行って下さい。 搬送担当者は、必要により下記のような説明をトリアージ担当チームに行って下さい。 ┌───────────────────────────────┐ │ ケガをした状況:2階から転落 │ │ │ │ 救出したときの状況:救出した時から、意識はありません │ │           呼吸は、殆どしていません │ └───────────────────────────────┘ トリアージ担当チームなどの面々は、「死亡と判断される状態です」「残念ですが、ケガの状況からみて助かる見込みは殆どありません」「蘇生を試みても救命の見込みは極めて低い上、現在の人員と設備では蘇生を行うことも不可能です」「放置できない危険な状態の重傷者が他に多数出ているため、こちらにかかりきりになれないのです」などの説明や人工呼吸と心マッサージについて教えて、家族に施行させるなどにより対応して下さい。 トリアージ担当チームの役者のみならず、各役者の演技は、アドリブ大歓迎です。配役が決定したら、それぞれ該当ページをコピーするなどして、各自リハーサルを行い、効果的な演技やアドリブを考えておいて下さい。     トリアージ・デモンストレーション、計画から実施当日までのご説明 トリアージ・デモンストレーションの実施を計画される方々(以下、「実施関係者」)のために、会場やスタッフ・役者などの概要について、具体的に、ご説明します。       1 会場について @屋内・屋外を問わず、運動場・体育館・講堂など何処でも実施できます。  屋内で行う際には、血糊などで通路や床が汚れないように、ご配慮願います。 A別途、模擬患者のメイキャップを行うための部屋(場所)が必要です。  長机や椅子も5セット程度ご用意下さい。事後の清掃やメイク落としなどのために、部 屋や部屋の近くに水道や流しがあると便利です。  部屋を使用する際には、血糊などで汚れないように、ご配慮願います。 B会場の管理者に、上記について説明し、会場の使用について了解をいただいて下さい。 会場に模擬救護所を設営し、その周囲を見学者が囲んで見学します、講堂の場合は、舞台上に模擬救護所を設営し、床に椅子を並べて見てもらう方式でも実施できます。この場合、後の席からは役者が小さくなり、見えにくいので、ビデオカメラで撮影した映像をプロジェクタで映して実況中継を行う方法もあります。 一度の見学者数は200〜250名前後が適切ですが、見学者が多い場合、会場に模擬救護所を2ヶ所設営し、役者なども全て2組用意して同時進行で実施する方法もあります。 実施関係者は、会場設営などの準備を、遅くともトリアージ・デモンストレーション開始の1時間前までには開始するようにして下さい。     2 司会者と支援スタッフ(準備と実施進行のためのスタッフ) @実施関係者の中から、司会者1名と支援スタッフ8名を選んで下さい。 A司会者は、当日、手引きの記載に従って医師役・看護師役などの救護関連の役者に対し て演技指導などの事前準備を行い、本番では、シナリオに沿って解説を行いつつ、支援 スタッフを指示してトリアージ・デモンストレーションを進行します。  解説はシナリオを読むだけなので、誰でもできますが、医師・看護師など医療知識のあ る方が適役と思われます。 B支援スタッフは、当日、手引きの記載に従って各々が担当する役者に対してメイキャッ プや演技指導・出番の説明などの事前準備を行い、本番では、司会の進行に沿って各役 者を送り出し、最後は、それぞれ役者として会場に出て行きます。 司会者を複数の方が担当し、解説する部分を分担する方法もあります。 司会者・支援スタッフを含めた実施関係者の方は、手引きやシナリオにお目通しの上、スムーズに実施できるよう、実施当日まで、十分にシミュレーションや検討をお願いします。 司会者は、予定の時間になったら、担当の各役者の参加を確認し、手引きに記載されている演技指導や説明などの事前準備を開始し、本番前には、担当の役者を会場に引率して待機させて下さい。 支援スタッフは、予定の時間になったら、担当の各役者の参加を確認し、メイキャップ、手引きに記載されている演技指導や説明などの事前準備を開始し、本番前には、担当の役者を出発点に引率して待機させて下さい。        3 役者について @トリアージ・デモンストレーションでは、模擬患者の他、手引きに記載されているよう な、医師役・看護師役・記録係役、搬送担当者、家族役などの役者が必要です。 A内容は、全員が、シナリオに基づいた演技を行うだけであり、模擬患者にはメイキャッ プを施し演技指導を行い、他の役者にも演技を指導してから実施します。  更に、医師役の方にはトリアージの判定結果をもお知らせしますので、各役者とも、当 日に困惑することは全くありません。 Bトリアージ・デモンストレーションは、住民参加による体験型訓練ですので、これらの 役者は、できる限り、地域住民の方にお願いして下さい。  特に、医師役・看護師役・記録係役は、地域医療機関にお願いして下さい。 地域住民と地域医療機関の医師・看護師・職員が訓練体験を共有することで、災害時の救護活動に必要な連帯意識や信頼関係が生まれるものですので、地域医療機関の職員には役者として参加できなくても、是非、見学するように、と呼びかけて下さい。 配役の決定した役者の方には、各々の役柄の該当ページをコピーするなどして渡し、本番までに目を通し、各自リハーサルをしておいてもらって下さい。 なお、役者の方は、実施当日以外には、打ち合わせなどのために集まる必要はありません。 各役者の方には、当日は、各自の集合時間を厳守するように指示して下さい。又、実施当日、説明を忘れた方に備えて、各々の役者の説明を別途用意しておくことをお勧めします。      4 必要な物品について @必要な物品のリストは手引きに別途記載してありますが、A・B以外は、町内の防災訓 練でも使用する「一般的な備品」です。 Aトラウマメイキャップキット(模擬患者のメイキャップ用)・成人人形と赤ちゃん人形 (黒タッグ症例)は、行政などの防災関連機関に相談して貸与を受けて下さい。 Bトリアージ・タッグが入手できない場合は、CD−ROMに『トリアージ・タッグ自作 用ファイル』が文書ファイルとして収納されていますので、カラープリンタで印刷して 作成できます。(作成方法の詳細は、当該文書内に記載してあります。) 実施関係者の方は、実施の前に、必要物品が全て揃っていることを必ず確認して下さい。     5 当日の会場準備と進行 @当日の準備は、模擬救護所の設営や救護セットなどの小道具の配置が主なものです。  (会場のレイアウト例は手引きに記載してあります。) A実施関係者などの共同作業により、1時間程度で十分準備ができるものと考えますが、 予定の会場を事前に下見をしたり、少し早めに準備を開始するなど、余裕を持った対応 をお勧めします。 B出席確認や模擬患者のメイキャップなど役者への対応や進行についても、司会者や支援 スタッフだけで可能ですが、お手すきの実施関係者は、これらの手助けをお願いします。 マイク・スピーカーセットが不調だと、音声が見学者に十分聞こえず、せっかくの企画も台無しになってしまいますので、特に、音声関係は事前に必ず調整や確認をして下さい。