境界要素法研究会境界要素法論文集第5巻(1988年12月)
Key Words: Seismic Source, Boundary Element Method, P, SV, Rayleigh Waves, Sedimentary Basin.* 会員、早稲田大学・大学院生、〒160 東京都新宿区大久保3-4-1、早稲田大学理工学部建築学科谷研究室、Tel.03(203)4141 (内)73-3261
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...............(3)上式中、i、j、kはx又は2を意味し、同時に総和規約を用いている。又、λ、μはラーメの定数、Uiはi方向変位、Piは同境界応力、X、Yは領域内又は境界上の任意点、XFはΓF上の代表点、Ukiは基本変位解、Pki同境界応力である。記号畜}dΓ(X)は、Xに関する境界積分を表し、係数Cは、Y点の位置によって決まる係数である。例えば、全無限体の基本解を用いたとき、Y点が領域内にあれば1、滑らかな境界上にあれば0.5となる。又、[Ui]、[Pi-]の式中右肩の符号+、−はそれぞれΓF+、ΓF-での値を、ni-はΓF-境界側の外向き法線のi方向成分を表す。
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...............(5)ここで、iは虚数、δkiはクロネッカーのデルタ、NはX点のある境界上の外向き法線ベクトル、Niはそのi方向成分、記号 ,iはi方向偏微分、,nはn(法線)方向偏微分、,rはrに関する微分を意味する。又、H0(2)は第二種零次ハンケル関数、H1(2)は第二種一次ハンケル関数、ωは円振動数、VPはP波速度、VSはS波速度である。
2) 二次元断層震源モデルの導入
断層モデルは、(2)式UkFにおける断層面上の変位[Ui]、応力[Pi-]の与え方により「ディスロケーション(又は運動力学的)モデルと「応用緩和モデル」の二種類に大別できる。ここでは、簡単なディスロケーションモデルで定式化する。
断層面ΓF上での仮定は Burridge and Knopoff 10)と Haskell 11)に習い、これを二次元化する。
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...............(9)上式中、(6)式は、断層面上の応力差[Pi-]が零であること。(7)式は、断層面のずれがせん断すべりであることを意味する。又、(8)式における変位の食い違い量[Ui]には以下の仮定を用いている。すなわち、断層面(傾斜角δで傾いている)の端部(XF点)から、破壊が始まり、破壊は一定の破壊伝播速度VRで、幅Wの断層面上を伝わる(図2のξ点)では、食い違い量Dが、時間τ(立ち上がり時間)秒かけて0からDまで一定の速度で生じる(ランプ関数を仮定)。
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...............(11)断層の大きさが無視できないときは、上式をそのまま用いる。しかし、ξの変動に対し、(10)式Uki,jを(10)式の積分の外に出せる。この時、ξに関する積分を実行すると(10)式は、次式にまとまる。
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...............(15)上式中、ρは密度である。又、M0(ω)、M0は、三次元の震源スペクトル、地震モーメントに該当するものである。尚、本断層モデルは二次元であるため、断層の長さが面外方向に無限に長い、ω=0における変位のフーリエ振幅が発散する、など現実的でない面がある。
3) 内部減衰(Q値)の導入
本論文では、(4)式の基本解Uki、PkiにおいてVS、VPに該当する項に次式の減衰項を掛けることによって、Q値を導入する。
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4) BEM離散化と解法
(1)式で、X、Y点を境界ΓS、ΓB上に置き、境界積分方程式を求める。次に境界ΓS、ΓBを離散化し、各要素内でUiとPiを一定(一定要素)とし、さらにY点を各直線要素の中点に採りマトリックス表示をする。
...............(17)ここで、{U}は境界ΓS、ΓBでの変位、{P}は同応力、{UF}は断層からの変位入力を表すベクトルである。
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...............(19)ここで、(18)式は自由表面(ΓS)における応力条件、(19)式は堆積層・基盤間の境界面(ΓB)における変位と応力の連続条件である。PS、PBはそれぞれ堆積層、基盤の境界面上の応力、US、UBは同変位を意味する。
...............(20)本論文では、Ricker wavelet(卓越周期=5sec)を原点に働く地表面の上下動応力Q(ω)として与えられる。モデルは始め一層地盤モデルでチェックを行う。モデルと定数、要素分割、を図3に示す。
2) 堆積層のP、SV、Rayleigh波解析:
図5の様に、関東平野を、都心部から東南方向に断面を切り、堆積層と基盤を各一層ずつでモデル化する。盆地内部での、基本モードのRayleigh波の卓越周期は約5秒であり、この値は都心部での地盤構造から実際に予測される各卓越周期 1)とほぼ一致する。
震源は相模トラフから平野下にもぐり込むフィリピン海のプレートと、ユーラシアプレート(北米プレート?)の境界面に置き、線震源から図5に示したパラメータでパルス状の波動を発生させる。震源Aは都心部の直下にある場合、震源Bは相模トラフ近くの浅い震源位置にある場合である。対象とするのは2秒以上の周期成分である。
図6が、図5の堆積層上の各観測点における速度波形である。図より、盆地直下に震源があるモデルAでは、盆地内の波動は、ほぼ実体波のみの波動になるのに対し、浅発のモデルBでは実体波(P、SV波)に加え、盆地端部から生じる表面波(主に基本モードのRayleigh波)の存在によって、かなり計測時間の長い波動となることが分かる。
Q値(内部減衰)を導入すると、減衰の大きな堆積層を伝播するため、実体波に比べ盆地端部から発生するRayleigh波の、その特に短周期成分が大きく減衰する(図6の破線)。
以上の結果は、これまで得られているSH、Love波に関する結果とほぼ一致する。